〈生なごやん〉本家と互角の戦いになるなんて思いもしなかった。

ゆずれないおやつの話_vol11〉

〈ゆずれないおやつの話〉では筆者の人生において欠かせないと思うおやつについて勝手な尺度で語ります。今回は敷島製パン(PASCO)が創業100周年の記念として作った新商品『生なごやん』の話。


敷島製パンの創業100周年を記念して作られた新商品『生なごやん』を食べた。かねてからなごやんの大ファンであるから食べないわけにはいかない。

だけどわたしは「変わり種」や「リメイク」「アレンジ」という類のものが本家を超えることなんて基本的にはほとんどないと思っている。たとえば人気海外ドラマシリーズのスピンオフ作品が本家を超えて人気になることは非常に稀だし、名曲をどんなに歌唱力の高い歌手がカバーしてもやはり本家を超え名を轟かせるのは難しい。閑話休題。なごやんにおいてもわたしは「変わり種」が本家を超えることなどありえないと思っていた。

これまでにも敷島製パンは『抹茶味』や『栗入り』など様々な変わり種なごやんを発売してきたし、もちろんどれも美味しかったのだけれど、変わり種はやはり変わり種であるなという思いが拭いきれない味わいだった。しかし『生なごやん』はそんな今までの変わり種とは一味違う。


2020年6月1日発売。

そもそもなごやんはわたしにとってソールフードのようなものだった。異国の地でもしばらくすれば米が食べたくなるのと同じで、どんなに歳を取りたくさんのお菓子に出会っても、なごやんの素朴で普遍的な美味しさを忘れることはなかった。にもかかわらず『生なごやん』の出現以来その不動の地位がぐらぐら揺らぎ始めている。

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『生なごやん』がこれまでの『変わり種なごやん』たちと一線を画している一番大きな要因は素材を大幅に変更して作られている点にある。そもそも本家なごやんが「カステラ饅頭」というジャンルに属するお菓子であることは皆さんご存知だろうか。本家なごやんは舌触りこそ淡白だが甘さ控えめの薄皮と白餡が噛めば噛むほどしっとり馴染み素朴ながら食べ応えのあるお菓子だ。カステラ饅頭というジャンルに属すだけあって乳製品との相性が良く子供の頃は牛乳をおともに味わうことが常だった。

一方の『生なごやん』は蒸して作られており、中にはカスタードにも似た濃厚なクリームが入っている。カステラと白餡はいずこへ。

外側の生地は黒糖饅頭にも近いが、黒糖饅頭よりいっそう柔らかい仕上がりになっていてもちもちを超えもはや「むっちり」の域。ここまで違うとなるともはやなごやんとは名ばかりの別物なのでは?と思う人もいるかもしれない。しかしそこが『生なごやん』の不思議なところで、皮も中身も何もかも違っていながら、鼻に抜ける風味や後味にはしっかりとなごやんの面影を感じさせる。牛乳やほうじ茶との相性が良いところもなごやん的だ。

昨日なごやんと生なごやんが並んでいる棚を前にして、わたしは『生なごやん』を手に取ってしまった。生なごやんはすごく美味しい。認めざるを得ない。

海外ドラマ『NCIS 』がもう何年も前に本家シリーズ『犯罪捜査官ネイビーファイル』のシーズン数を超えたように、そしてJITTERIN’JINNの『夏祭り』が今や多くの人にとってWhiteberryの代表曲であると誤解されているように、レアケースではあるが変わり種が本家を超えるということはあり得る。同じように『なごやん』の歴史も今塗り替えられようとしているのかもしれない。

しかしこれが目新しさによるものなのか、本格的な世代交代なのかはまだわからない。わたしとなごやんにも十年以上の付き合いがあるので本家なごやんの座が生なごやんによって奪還されるかどうかは要検討。


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