その部屋の住人#1

他人の部屋は面白い。たぶん指紋のようなもので、世の中に他人と全く同じ部屋は存在していない。そんな部屋に溢れている無自覚な習慣やエピソードあれやこれやの話を聞いてまとめる住人たちの見聞録です。第一回目はシンガーソングライター・岡林さんのお部屋の話。

〈ROOM〉

Area:愛知県/多治見市
Layout:1K(19.44㎡)
Floor:1階(4階建て)
Direction:南
Addition:居住歴は22歳~26歳までの4年。最寄り駅から徒歩15分の場所にある4階建てのマンションの1階。悲しかった出来事は駐輪場の自転車を盗まれたこと。

ーー そもそもこの部屋に決めた理由は?

消去法(笑)この部屋以外に4件くらい見せてもらったんだけど他の部屋は設備が古すぎたり一階が飲食店だったりで決め手がなくて。

「南向きで家賃と共益費込み3万円以下」っていう条件以外にはこだわりもなかったし、一人暮らしするの自体初めてだったから判断基準もなかったんだよね。この部屋は日当たりがとにかく良かったから、まあここならいっかって感じで。

ーー後悔しなかった?

勢いで決めたわりにはなかった。アパート自体がちょっと変わったところにあって、スーパーと薬局の駐車場の敷地内に建ってたんだよね。

ーー それは変わってる。便利だね。

そう、だから買い物にはまず困らなかったし、周辺に飲食店も多くてかなり便利だった。店舗の数は駅前よりこの辺の方が多いんじゃないかな。スーパー、薬局、美容院、パン屋さん、バー、ラーメン屋さん、ブロンコビリー、いきなりステーキ、ジャパレンもあった。ゲーセンもあったからプリも撮ったし。あと部屋は一階だったんだけど日当たりもかなり良くて。生垣がいい感じに目隠ししてくれてたから基本的には網戸にレースのカーテンだけで過ごしてた。

ーー1階って外の人の気配とか気になるよね。

気になるといえば気になる。夏場は基本的に網戸にしてたんだけど、ベランダの前に人がよくたむろしちゃってて(笑)このアパートが、道路側から見たときに丁度目隠しになるみたいで、アパート裏手のわたしの部屋のベランダの前がたぶんたまり場としてベストポジションなんだよね。だから近所のラーメン屋のバイトの人たちが帰りに待ち合わせしてたり、カップルとかヤンキーとか謎のバイク集団もよくたむろしてた。生垣挟んでるとはいえ会話も丸聞こえだったから慣れてからはむしろたむろされるのがちょっとした楽しみだった。

近所の飲み屋から出てきたばっかりかなって感じのほろ酔い口調のカップルが痴話喧嘩始めて女の子が号泣しだしたり、ヤンキーが殴り合いの喧嘩始めたり。それで、上の人にわたしが騒いでるって勘違いされて床ドンされたこともあったけど(笑)あと昼間は近くの宝くじ売り場の音楽がいつも聴こえた。

ーー 毎日賑やかだね

賑やかだった!でも喧嘩はさすがに怖かったね。

音関係のことで言ったら壁が薄くて隣の生活音がまる聞こえだったことの方がしんどかったかも。鉄骨造だったんだけど、朝になると隣の人がお経?みたいな重低音の何かを唱えてる声が聞こえてきて。

ーー怪談?

って最初はわたしも思った(笑)でも隣の人たぶんめっちゃいい人だったんだよね。わたしがギター弾きながら歌ってる時はいつも歌い終わるまで絶対に窓開けたりベランダに出たりしない人だった。それで歌い終るとだいたい隣の窓が開く音がして、ベランダでタバコ吸い始めてた。たぶんわたしが歌い始めてからベランダに出ると「うるさい」って意思表示みたいになっちゃうから気使ってくれてたんじゃないかな。わりといつも歌ってたけど文句言われたこともなかったし。

ーーライブじゃん(笑)お互い様っていうかそれ以上だよね

本当にそう思う。反対側の人も含めて隣人にはかなり恵まれてたと思う。

ーー部屋探しのとき家賃は決めてたって言ってたけど毎月の収入に対して家賃の割合ってどれくらいだったの?

3〜4割くらいかな。光熱費とか雑費が2割で残りで本買ったり、服買ったりって感じだった。貯金はほぼしない。

ーー部屋自体のことで不便なこととかあった?

コンパクトキッチンはとにかく不便だった。パスタも一気に作れないし。ガス線はあったんだけどなんかガス使うの怖くて空いてるスペースに独立IHコンロ載せて使ってた。あと家電3つ同時に使うとブレーカーが落ちるのとか、小窓がないのも不便だったかな。

ーーかなり不便だね

うーん、でもあらためて思い返してみても、最終的には結局愛着が上回ってたっていうか。ブレーカーも落ちたら上げればいいやって思うようになってたかな。

冬になるとベランダの室外機のところに野良猫が暖まりにくるんだけど、元々はわたし猫が嫌いで。でも何回か顔合わせてるとやっぱりちょっと可愛く思えてきてたり。お前も頑張れよ、みたいな。それに不便なところは色々勝手に改造とかもしちゃってて。コンパクトキッチンの収納部分の扉勝手に外したり、天井の木の部分(廻り縁)に勝手に釘打ち込んでワイヤー通して洗濯物干したり、収納も少なかったから自作してたし。部屋の契約が修繕費は取らないっていうパック?みたいな契約だったから好き勝手できたけどそうじゃなかったら絶対アウトだった(笑)

でも生活しながらちょっとずつ改造してた分どんどん愛着も湧いてきて、欠点もあんまり気にならなくなってた。網戸は開けるたびに外れるから、もう外して開ければいいやと思うようになったし、トイレと風呂が一緒なのもトイレ掃除が楽だな~くらいに思うようになったね。

ーー慣れってすごい。引っ越すのさみしくない?

だいぶさみしい。さみしいっていうかなんか、まだ実感ない。

ーー話変わるけどこの部屋に引っ越してくる時に家電とかけっこう揃えたの?

家電は無印の3点セット(レンジと冷蔵庫と洗濯機)とパナソニックのすぐ乾くドライヤー買った。マキタの掃除機は実家から持ち込んだやつで、キッチン用品は基本ホームセンターとかで買い揃えたんじゃなかったかな。あとは無印のベッドと珪藻土マット。

ーーこれは買って良かった!ってものある?

パナソニックのすぐ乾くドライヤーと珪藻土マット!ドライヤーは音が隣に響くからとにかくすぐ乾くのがありがたかった。珪藻土マットは単純に便利。

ーーそういえばアロエ育ててたよね?

植物育ててみたいなと思って、アロエとザミオクロカスって植物も一緒に買った。ちなみに名前はあーちゃんとザミ男でした。呼んだことないけど。

ーー過去形?

枯れたから(笑)一回生き返ったんだけど、結局枯れた。

ーー部屋にいて楽しかったのはどんな時?

とにかく日当たりやばすぎたから、毎日サンキャッチャーが虹を放ってそれが幸せだった。

ーーもし今、不動産屋さんに案内してもらってる時点に戻れるとしても、やっぱりこの部屋にする?

この部屋にする。狭かったけどあれはあれで結構楽しかったから。

 

 

▶︎住人が選んだこの部屋のBGM:
岡林風穂「毛布を洗いたい」/「私が育てたアロエ」

毛布を洗いたい 私が育てたアロエ